障がい福祉サービス事業サポート | 古川行政書士事務所

コラム

夜間支援体制加算Ⅱ(共同生活援助)

わかりにくい加算・減算

共同生活援助において夜間支援体制加算Ⅱを算定するには?

宿直とは、夜間の定期巡視などを行い、非常事態に備えるもので、ほとんど労働する必要のない勤務態様をいいます。
宿直という言葉はよく耳にしますが、実は労働基準監督署長の許可が必要で、しかも、従業者1人につき週1回までしか認められません。
そして、グループホームにおける報酬の加算算定についても、必然的に従業者1人の宿直勤務につき週1回が限度となります。
以上を念頭に以下読み進めてください。

夜間支援体制加算Ⅱとは?

事業所の従業者である世話人、生活支援員の宿直勤務による夜間の利用者支援を評価するものです。

夜間支援体制加算Ⅱの算定要件

①宿直を行う夜間支援従事者を配置すること
②深夜および夜間の時間帯(午後10時から午前5時の時間帯を最低限含む。)に配置されていること
③利用者の状況に応じ、定期的な居室の巡回、電話の収受のほか、必要に応じ、緊急時の対応等を行うこと

夜間支援体制加算Ⅱの加算額

「1人の夜間支援従事者が支援を行う利用者(夜間支援対象者)の数」により加算額が変わります。
※夜間支援対象者は、現に支援している利用者の数ではなく、前年度(4月~3月)の平均利用者数です。計算して端数が生じた場合は、四捨五入。

夜間支援対象利用者数単位数/日
4人以下112単位/日
5人90単位/日
6人75単位
7人64単位

宿直勤務の許可(労働基準法)

宿直勤務を行うには、所轄労働基準監督署長の許可(断続的な宿直または日勤許可申請書により申請)を受けることが必要です。
許可を受けることにより労働基準法第32条の労働時間等の規定などの適用が除外されます。
一方、許可を受けていない場合は、宿直ではなく夜勤となるため同法37条の時間外手当、深夜手当を支給する必要が発生します。

具体的な許可要件(労働基準法)

①業務内容は、定時的巡視、緊急の文書または電話の収受、非常事態発生の準備等を目的する労働とはいえない程度のものであること。
→グループホームにおいては、定期的な居室の巡視(一人の従事者が複数の共同生活住居の夜間支援を行う場合は、少なくとも一晩につき一回以上は各共同生活住居を巡回)および軽度かつ短期間の作業のみ行うもの
②相当の手当を支給すること(通常勤務の1日平均賃金額の3分の1以上)
③宿直の回数は、原則週1回まで
④相当の睡眠設備を有していること
加えて本件のような社会福祉施設での宿直に特有の要件として
⑤通常の勤務時間の拘束から完全に解放されていること(通達S49.7、26基発第387号)→通常勤務と連続しての宿直勤務は認められません。

指定行政庁へ加算の届出が必要

労基署長の許可を得て、事業所において宿直勤務が可能となっても、加算を算定するには夜間支援体制加算Ⅱの届出が必要です。
→これにより「宿直勤務を行った日」について加算を算定することができるようになります。

FAQ(よくある質問)

1. 誰が宿直勤務しても加算の対象となりますか?

→宿直勤務といえるには、通常の雇用契約に基づく労働に加えて、夜間見回り程度の勤務を行っているという実態が必要であり、主体は雇用契約を締結している従業者です。
→「雇用契約等により管理者の指揮命令下に置く従業者以外(ボランティア)により支援した日は加算対象外」(滋賀県・令和2年度障害福祉サービス事業者等実地指導の状況)となります。

2.グループホームの住込み従業員が、世話人または生活支援員として勤務している場合、夜間の巡回程度の業務は毎日行っており、夜間支援体制が整っているといえるから、毎日、夜間支援体制加算Ⅱの算定をすることは可能ですか?

→「住み込みの従業員がいることのみをもって夜間支援体制加算(Ⅱ)を算定することはできない。」(「平成26年度障害福祉サービス等制度改正に関するQ&A(平成26年4月9日)」です。
→前述のとおり労働基準監督署長の許可が必要であるし、1人の従業員の宿直勤務は週1回までに制限されています。
→住込み従業員がグループホームのユニットに1人いるだけであれば、原則、加算の算定も週に1回までしかできません。

実地指導で報酬返還を受けないための注意事項

・「宿直職員を配置していることが勤務割表から確認でき」(富山市・集団指導資料)るようにしておくことが必要です。
・夜間に行った支援内容の記録はすべて残しておくことが必要です。